11月の終わりに



11月の終わりに同僚のFさん(千葉県出身・27歳・イケメン)が退職する


僕の胸の中で抑え切れない想いがあった


聞いてみたい 


言ってしまいたい


もう時間がない・・・


彼の出勤最終日


僕は思い切って彼の元へ駆け寄る


柔らかな風が窓からこぼれ、彼のウェーブの掛かった茶色い髪を撫で付ける


「どうしたの?おっちぃさん」


メガネの奥に見える、薄い色素の瞳の中に僕の姿が映る


僕の消え入りそうな姿が、彼に吸い込まれそうになっている今の心境とダブって見えた


もしかしたら彼は、僕が捜し求めていた貴方(ひと)なのかもしれない・・


「Fさん僕・・最後にどうしても聞いておきたい事があるんです」


彼の優しい笑顔に一時の緊張感が走る


カンのいい彼の事だ、きっと僕の考えは全てお見通しなのかもしれない


今言わなければ


きっと後悔をするに違いない それならば


僕の体はピーナツの殻のように堅くなり、緊張感はマックスになって行く


渇いた唇を湿らす時間も惜しんで、僕は聞いた


「Fさんはやっさいもっさい踊れるんですか?」


「なにそれ?」


「あ、もういいですわ それじゃ」


やっさいもっさいを踊れる人を捜して、明日からも私の旅は、つづく


ーおしまいー