NGワード
通勤や通学で必ずいつもすれ違う、名前も知らない人っていますよね
僕の場合、まるで決まっていたかのごとくすれ違う人が数名います
一人は30代後半、動作の機敏なサラリーマン風の男性
彼はとにかくキビキビとしていてとてもリズミカルに歩きます
中分けにした髪型とその大きな体格はまるでヤンキースの松井選手が憑依したかのよう、
僕は彼のことをひそかにMリーマンと呼んでいます
もう一人は40代後半、とても気品の溢れるミセス風の女性
彼女はいつも高そうなバッグを肩に抱え、少し前かがみに歩きます
パーマの掛かった黒髪越しに前を睨む三白眼は「ガラスの仮面」の月影先生そっくりです
僕は彼女の事をそのまま「月影先生」と呼んでいます
最後に残った一人は年の頃は僕と同じか、少し下の男性
彼はいつも茶色い鞄を肩に掛けて、だるそうにゆっくり歩きます
短髪にして色の浅黒いスッキリとした端正な顔立ちはサッカーの柳沢選手そっくりです
僕は彼のことをイケメンと呼んでいました
呼んでいました、と過去形なのは最近彼の名前を知ったからです
彼の名前は「山○」さんでした
毎日毎日すれ違えども挨拶一つせずに人々が行きかう都会の東京砂漠、
それにすっかり慣れた僕にも「いつも素通りする彼らと少し話をしてみたい」と言う
気持ちが芽生えていたのを否定はしません
まあ正直に話すと一番話したかったのは月影先生でしてね
彼女の醸し出すそこだけマンガみたいなオーラの元を少しでも解明したかったんですが、
どう考えても彼女と話をするところまで持っていくフラグが立つ気がしません
ていうかちょっとでも間違った選択を選んだ瞬間に即バッドエンドが訪れそうで、
彼女の髪がメデューサのように僕を睨み付けそうで正直マジ勘弁って感じでした
なので僕は一番年も近くて話しやすそうなイケメン山○さんにターゲットを移してみました
まあMリーマンは歩くのが早すぎて油断してるとすぐにどっか行っちゃうって事もありましてね
そんなこんなでチャンスを伺っていたある週の木曜日、その歓喜の瞬間は訪れました
いつものように前を歩くYイケメン、もとい○下君
僕はだるそうに歩く彼を追い抜いた後、すぐ目の前にある交差点で信号を待っていました
すると後から追いついた彼は携帯電話を取り出そうとポケットを探ります
次の瞬間、取り出そうとした携帯電話は音を立てアスファルトに叩きつけられ・・・
すっかり油断していた僕の目の前に転がってきたのでした
僕はそれを拾うと初めて僕にあわてた表情を見せる彼に差し出そうとします
すると彼の手元には僕が持っているのと同じ柄のセキュリティ・カードが・・
なんと僕と彼は同じ職場の人間だったのです
「あれ?○○○の方なんですか?」
嬉しくなった僕は彼に話しかけ、毎朝会うのにそれすら知らなかったお互いを笑いました
彼は全然別の部署の人で顔を合わさなかったのも当然と言えば当然なんですが、
同じビルに入るのにその瞬間すら見たことも無いというのも滑稽なものです
ところで話は変わりますが、僕が彼のモデルとしていたサッカーの柳沢選手の
致命的な発言をご存知ですか?
一昨年のW杯クロアチア戦、絶好の位置からのシュートを外した柳沢選手はこう言って
世間の非難を浴びます
「急に、ボールが、来たから」
この発言は他人を出し抜くことを必須とされる一瞬でも油断の出来ないサッカー、
いやスポーツにおいて絶対に言ってはいけない発言です
案の定この発言は某掲示板などで
「QBK(Q急に Bボールが K来たから)」
といわれ散々ネット上で叩かれました
彼を高校生時代から見ていて、どちらかといえば好きな選手だった僕でさえこの発言には力が抜けました
事実そのW杯後、彼が日本代表に呼ばれた事はありません
それで何が言いたいかというと僕はその同じ会社のイケメンに向かってやっぱし致命的な一言を述べます
「ずっと前からカッコいいな、って思ってたんですよ!」
このセリフを僕の口から聞いたとたん、彼の表情が引きつっていくのが分かりました
その日は結局そのまま別れましたが、今年に入って同じ時間、同じ道を通っているにもかかわらず、
朝の道すがら彼に会う事はなくなりました
世の中には絶対言ってはいけないNGワード、というものが存在します
それまでが上手く運んでいてもその一言がリーサルウエポンとなりえる何かが
サッカー話まではフレンドリーに接してくれた彼、道を変えるに至った理由はきっとこんな感じでしょう
「Q今日の Bバカが Kキモかったから」
みなさんもこれから社会に出て行く中で、言ってはいけない一言に気をつけてくださいね!
おっちぃからの忠告だよ!(^∀^)ノ
という2/3くらいがホントの日記でした!
で、結局この日記は何が言いたかったんだろう・・
(おしまい)